ー微生物が健康にする人と環境ー人の不調と地球の不調はつながっている。
この本は、たった一つのことを多面的に、そして、掘り下げて述べているので、事象的に語ることは一杯あるが、簡潔にお伝えするのであれば、次に言葉に要約される。
人にとって最も身近な自然環境は「腸内環境」であり、そこは人が根を下ろす「土」にあたる。土壌に暮らす微生物が、食べ物と共に腸内に移住したものが腸内細胞の起源であり、人は今でも「食べる」ことを通して、外的な環境と接続しているのだ。日々の食べ物が腸内の土作りの材料になり、消化や腸内細菌による発酵を通じ栄養豊かな土になる。それはまるで、森の落ち葉や動物の死骸から腐植土が作られるシステムと同じである。
本書では近年明らかになっている腸内環境と心身の不調の関連について、最新情報を伝えつつ、人と地球の土を同時に改良する食べ物の選択の重要性と具体的方法を「プラネタリーヘルス」の視点から説く。近代農法や畜産が環境に与える甚大な影響と、それを解決する農業や食の未来も伝える。
本書装丁文から
この本を知ったのは、「易経」の解説では有名な、竹村亜希子さんが、あるセミナーで語っていたからである。いつも話すのだが、私は、触れ合った「縁」のなかで知ることができた本の情報は、「これは、読みなさいとの神仏の計らいだ」ということを信念的に持っているので、直ぐ、購入した。
そして、もうひとつの信念は、その本で語られている事象を通して、その「因果関係」を知ることである。そして、その「因果関係」を、自分の身近な出来事と世界的規模の出来事との両面から考察すること。さらに踏み込んでいけば、その「因果関係」は、他の事象の「因果関係」と同じ法則に沿って現れていることを認識する。それに気づかせるために、その「本」は、私の眼の前にフレームインしてきたのだ、との信念である。
今、世界は大きな環境問題を肌身で感じている。異常気象は、二酸化炭素の排出が原因であり、その対策が叫ばれている。その矛先は、飛行機のジェットエンジンや工場、車の排出に眼が向けられているが、実は、二酸化炭素の排出で一番多くの割合を占めているのが、食肉用「牛」の飼育である。餌としてのトウモロコシ栽培、そのための土壌改良(化学肥料の散布)により、土が二酸化炭素を吸収しなくなる。何故なら、土に生きる微生物の生態系が破壊されるからだ。そして、化学肥料まみれにされた餌を食べる牛の消化不全による「ゲップ」。それが、世界中の二酸化炭素排出量の50%以上を占めているのである。これは、科学的実証に基づいた分析だ。
極端に言うと、世界の環境問題は、スーパーのビニール袋に問題があるのではなく、そのビニール袋に入れる、牛肉にあったのである。私達が日常的に食べている牛肉が環境破壊の原因なのだ。こうした因果関係を明らかにすることは、社会課題解決の大事なポイントであると考える。人類の食生活を変える、牛を飼育するための餌を変える、その餌を栽培する土壌を変える、そうした、繋がりによる社会課題解決の因果関係を知り、変えていく努力をしていく。
「プラネタリ―ヘルス」とは、地球の健康、つまり、人類を含めた多様な生物が生命を維持できる自然環境を有し、地球上の人類が安全に有機的に活動ができる状態を指す。「地球上の人類が」という、人間の勝手な定義であるが、やはり、地球上のすべての生命体、と言った方が良いと思う。細菌から大型動物、土、水、空気すべてのものが、有機的に活動ができることが大事である。地球上の全ての存在するものは、すべて、必要あって存在している。それらは、直接的ではなくても、間接的でなくても、私達が、まだ知らない、「間(あいだ)」に何かしらの共存共栄・因果関係にあると信じている。つまり、すべてが繋がっているのだ。活かしあっているのだ。
私達の細胞の遺伝子を調べると、その6割近くが何かしらのウイルス遺伝子を内包していることが分っている。つまり、私達は、ウイルスのお陰で、今を生きていると言える。森林の土壌には、その腐葉土を創り出す細菌が多様に存在している。だからこそ、その細菌によって地球上の生命は活かされているのである。腸の細菌も同じだ。その活かされるとは、命を長らえるだけではなく、死をつかさどり、その再生をも担っている。生から死、死から生、その循環システムが、腐葉土を抱える森ひとつからも見出されるのである。その何百年にもわたって生きてきた細菌を生み出す、そして生かすシステム、つまり、その仕組みがなければ、森も人類もこの世に存在していなかったのである。その仕組みは、人間社会にも宇宙の生成にも、すべてのいのちの事象に組み込まれていると、私は信じている。その仕組みを、すべての事象で破壊しているのが私達である。環境問題で人類が滅亡するのではなく、人間の多様性を排除する意識が、私達を自然界から排除する世界を作り上げていくのだと感じている。
地球規模の環境問題も良い。しかし、日常の人間関係からの見直しが大事ではなかろうか?意見が違う、役割が違う、何かしらの違いに眼を向けて排除しようとする意識。その意識と、腸と脳の関係性が同じと捉えていく視点の取り組みが大切だと思う。意識の在り方を腸と脳の関係から見直すのである。
まず、その因果関係の仕組みを知る意味で、「食と人間関係」、「文明と腸の働き」、「文化と細菌の共通点」、「神と体内菌の類似点」など、そんなテーマで語って良いと思うのだ。私なら、「本と生態系(生命の綱)」というテーマで語ってみたいものである。
最後に、語るだけ語って追記するのも気が引けるが、だが、この本で教わって、意識に刷り込まれた言葉を述べて語りの幕を引きたい。
今、人類は、「アンチ」(戦いー)から「シン」(共にー)の時代にシフトしようとしています。本書が、シン世界を共創するヒントになれば幸いです。
はじめに
ついに分かった。映画「シン・エバンゲリオン」、「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」の「シン」の意味が、そして、映画が伝えたかったことが。そうなのだ。「共に」なのだ。これからの時代は、「シン(共に)」がキーワードなるのだ。ちょっと、興奮気味。