「ちえうみのごとくならん」

 「待ってました!」と、先ずは鬨の声を上げたい。そして、制作等に携わった経営者を始めとした関係者には、もうひと声言いたい。「ありがとう」。

 私が、学生時代から多くの書籍や発刊物でお世話になっている「㈱佼成出版社」が、自社著作物の「サブスクリプション」に着手したのである。

 その名も「ちえうみ」。 https://chieumi.com/

 数ある出版社の中、宗教関連や児童書でその確かな地位を築いた情勢出版社らしく、「ちえうみ」の名称は、仏教語の「智慧海」に由来しています。「深く経蔵に入って、智慧海のごとくならん」(華厳経浄行品)の経文の一節より、どこまでも広く深い海のような如来(仏)の智慧に溢れる場を目指してネーミングしました。

「㈱佼成出版社HP」より

 ㈱佼成出版社が、世に送り出した著作物のなかで、私が「ベスト3」として挙げるならば...

ベスト3は、「退歩を学べ」ーロボット博士の仏教的省察ー森 正弘 著

「退歩」とは禅に由来する語で、禅では「進歩」が「外的な対象に着目する姿勢」を言うのに対して、「退歩」は「心を問題にする姿勢」を意味します。
著者によれば、「進歩」だけでなく「退歩」が機能してこそ真に進歩するといい、「退歩」の具体的な実践方法として、仏教に基づくものの見方を図表や写真を用いて説明します。
東日本大震災以前から「進歩」一辺倒の歪みが露呈している現代日本ですが、「退歩」によって私たち一人一人が心豊かに生きていく先に、日本全体の真の「進歩」があると語ります。本書はアーユスの森新書の4冊目で、著者渾身の書き下ろしです。

プロフィール
森政弘(もりまさひろ)
1927年、三重県生まれ。
名古屋大学工学部電気学科卒業。
工学博士。東京大学教授、東京工業大学教授を経て現在、東京工業大学名誉教授、日本ロボット学会名誉会長、中央学術研究所講師、NPO法人国際ロボフェスタ協会特別顧問、ロボコンマガジン編集顧問。
ロボットコンテスト(ロボコン)の創始者であるとともに、約40年にわたる仏教および禅研究家としての著作も多い。
近著に『親子のための仏教入門――我慢が楽しくなる技術――』(幻冬舎新書)がある。

㈱佼成出版社HPより

 ベスト2は、「新・アジア仏教史」全15巻

 松岡正剛氏の書籍を読むと、「シリーズ全作であるアジア仏教史で多くを学んだ」と語っている。また、松岡正剛「千夜千冊」の1809夜では、新アジア仏教史11巻「日本仏教の礎」が紹介されている。ある意味、仏教を学ぶ者にとっては、必読の書とも言えるのではないだろうか。私は手に入れているが、まだ、1巻の途中までしか読んでいない。必ず読み切って「冥途の土産」にしたいと願っている。

新アジア仏教史 電子書籍発刊

佼成出版社から発刊されている『新アジア仏教史』のシリーズ(全15巻)が、このたび電子書籍になりました。各巻400ページ超の叢書を、スマートフォンやタブレットなどの電子端末で手軽に読むことができます。
◇ ◇ ◇
シルクロードや海路を通じ、アジア全域に広まったブッダの教え。伝播する先々で、地域の文化や習慣に大きな影響を与えた。そして、その地域に暮らす人々や風土によってさまざまに融合、発展し、仏教という膨大な思想体系を形成していった。仏教は現在もアジアの人々の暮らしに深く根差し、精神文化を支える基盤の一つとなっている。
本シリーズでは、インド・中国・日本・韓国・チベットなど、各地域における仏教の受容と発展、人々の信仰と文化の諸相を、200人に及ぶ第一線の研究者が豊富な写真・図版とともに解説。2500年もの仏教の歴史の全容を明らかにする。
◇ ◇ ◇
『新アジア仏教史』(全15巻シリーズ)
編集委員:奈良康明、沖本克己、末木文美士、石井公成、下田正弘
編集協力:林行夫、菅野博史、福田洋一、松尾剛次、佐藤弘夫、林淳、大久保良峻

第1巻 インドⅠ「仏教出現の背景」
第2巻 インドⅡ「仏教の形成と展開」
第3巻 インドⅢ「仏典からみた仏教世界」
第4巻 スリランカ・東南アジア「静と動の仏教」
第5巻 中央アジア「文明・文化の交差点」
第6巻 中国Ⅰ 南北朝「仏教の東伝と受容」
第7巻 中国Ⅱ 隋唐「興隆・発展する仏教」
第8巻 中国Ⅲ 宋元明清「中国文化としての仏教」
第9巻 チベット「須弥山の仏教世界」
第10巻 朝鮮半島・ベトナム「漢字文化圏への広がり」
第11巻 日本Ⅰ「日本仏教の礎」
第12巻 日本Ⅱ「躍動する中世仏教」
第13巻 日本Ⅲ「民衆仏教の定着」
第14巻 日本Ⅳ「近代国家と仏教」
第15巻 日本Ⅴ「現代仏教の可能性」

佼成出版社
各3600円(税別)
電子書籍ストア Kindle、楽天kobo

㈱佼成出版社HPより

 そして、ベスト1は、「新釈 法華三部経」庭野日敬 著

 私は、仏教もキリスト教も、そしてイスラム教も大好きである。もちろん、伝統も新宗教も、その範疇にある。「良いものは、何でも学ぼう」という考え方なので、初期仏教のお経である「金剛教」からお釈迦さまが涅槃に入られる前に説かれた「法華経」の関連本も読んだり読誦もした。そして、キリスト教の「聖書」や「死海文書」や塩野七海さんの本、イスラム教の「コーラン」も読んだし、「道元」「空海」「日蓮」など、読んできた宗教に関連する本は、数知れない。そう、「良寛」も大好きだ。

 庭野日敬氏の「新釈 法華三部経」は、仏教の学びとしても、生きる上でもお薦めしたい本である。

法華経をだれにでも分かるように平易に解き明かした現代感覚あふれる解説書です。法華三部経の真読・訓読に現代語訳が添えられ、法華経全体の教えが把握しやすくなっています。さらに、重要語句には開祖さまの体験にもとづく解説が加えられています。仏教の本義が明らかにされており、法華経思想の全貌をくみとることができます。
全10巻をセットでお届けします。

1.無量義経 徳行品・説法品・十功徳品
2.妙法蓮華経 序品・方便品
3.妙法蓮華経 譬諭品・信解品
4.妙法蓮華経 薬草諭品・授記品・化城諭品
5.妙法蓮華経 五百弟子受記品・授学無学人記品・法師品・見宝塔品
6.妙法蓮華経 提婆達多品・勧持品・安楽行品・従地涌出品
7.妙法蓮華経 如来寿量品・分別功徳品・随喜功徳品・法師功徳品
8.妙法蓮華経 常不軽菩薩品・如来神力品・嘱累品・薬王菩薩本事品・妙音菩薩品
9.妙法蓮華経 観世音菩薩普門品・陀羅尼品・妙荘厳王本事品・普賢菩薩勧発品
10.仏説観普賢菩薩行法経

㈱佼成出版社HPより

 「ちえうみ」のコンテンツは、『新アジア仏教史』(全15巻)、『構築された仏教思想』(現在11巻発刊)などのシリーズ本や新刊書籍を含む130点からスタートしている。物事のとらえ方を見つめなおし心を整える生き方指南の入門書から、経典解説、宗派や祖師についての研究書など、充実したラインアップを取り揃えていくとのことである。

 最近亡くなられた「ひろ さちや」さんの「道元を読む」などの「祖師を読むシリーズ」も提供されていると聞いている。これから増えていくはずだが、現在、130冊以上のコンテンツが読み放題だとのことだ。

 https://chieumi.com/

利用プランは、1点から購入できる「単品プラン」と月額定額制の「読み放題プラン」(税込990円)の2種類をご用意。WEBサイト上での販売で、24時間好きな時にご利用いただけます。

㈱佼成出版社HPより

 一点、提案がある。「ちえうみ」コミュニティサイトを立ち上げたらどうだろうか。オンラインと共にオフラインでの交流でも良い。ハイブリット型も良いと思う。

 「智慧は、話すことによって伝わり、伝わることによって拡がる。そして、それは、新たな慈悲を創発していく」

 宗教分野を得意とする出版社なのだから、「ちえうみ」を広げるためには、お釈迦さまの布教のあり方から学ぶと良いと思う。経営者の学びの組織の事務局長からすると、お釈迦さまは、教えを広める最大の営業マンだったと思っているところがある。「仏教精神に学ぶ」は、私の人生のテーマでもあるのだ。