特定非営利活動法人八王子つばめ塾 理事長小宮位之さん

 小宮くんは、私の人生にとって、生き方を真似したい人のひとりである。ガラガラ声でよくしゃべるそのキャラクターは忘れられない人となる特性だ。

 映像製作の仕事で、アフリカのウガンダの少年兵やレバノンのパレスチナ難民、ニューヨークでの核兵器廃絶運動の取材にも行ってもらった。その彼が、突然、「子供たちのために仕事を辞めて、無料の学習塾を始めたい」と言って来た時には、私が驚いたのも無理はない。彼を、映像製作の仕事に引っ張ってきたのは、私だからだ。「辞めるのを止めるか、喜んで送ってやるか」。当時、「無料塾」という言葉を耳にしたことが無い時代だ。「それで、家族を養っていけるのか」との心配もしたし、今、彼が、私の映像製作スタッフから外れることは、私にとっての痛手になることは十分に理解できたからだ。

 でも…..。「自分の都合を、相手にの人生に押し付けることはできない」。その想いが強くなって、最後には「がんばれよ」と言って別れた。荻窪の居酒屋の前を通ると、その時のことをよく思い出す。

 その後、彼は、自分の夢を実現させ、マスコミで度々紹介されるまでになった。その彼と、私の仕事関係の集いで講演をしてもらうための打合せを行った時、私は、彼の話に泣かされてしまったのである。

 「お金が、8千円近くしかない通帳を見て、俺は何をやってるんだろうと、考えたら泣けてきて、家族のいる家を飛び出し、夜の八王子の街を泣きながら歩いたことがある」

八王子にて

 彼は、間違いなく、社会課題の解決に人生を賭した人物だ。こんな人物と付き合っているなんて、なんと幸せのことか。私が職場を定年退職する際、彼に御馳走をさせていただいた。私の乾杯の言葉は「ありがとう!」だった。

お問い合わせ先

関連記事