SDGs-危機の時代の羅針盤

 SDGsの名は、2021年、東京オリンピックを前後にして、TVをはじめ、いたるところで聴く言葉になっていた。

 この本は、テラ・ルネッサンスのオンラインサロンに参加した際、鬼丸昌也さんから教えていただいた。私は、この本に出合えて、本当に良かった思う。鬼丸さんには感謝したい。

 しかし、そのSDGsの名は知っていても、その本当の意味を知る人は少ないのではないだろうか。よく、企業をCMを聴くと、「私たちは、SDGsを支援しています」と、少し、鼻高々にナレーションが語っているのを聴くが、「あぁ~」と、残念な気持ちになる。また、私が勤めていた組織でもそうだが、SDGsの学習会では、17のゴールと169のターゲット、そして、232の指標を示して、「持続可能な社会・経済・環境」に移行する社会の重要性は学ぶ。しかし、貧困・環境や資源問題を全面的に出しすぎて、他の国、そして、世界の問題になりすぎている感じがしている。だから、自分の問題になっていないのだと思う。だから、世界の問題は、私ではなく、誰かがやってくれるだろうとの、安易な気持ちを生じさのだと思う。だから、「支援」なのだ。

 「私たちは、SDGsを実践します」と宣言するCMが正解なのである。

 SDGsの17のゴールは、目標ではない。たった一つしかない地球を救うためには、避けてはいられない実践項目なのである。それも、地球に住む一人ひとりの問題なのである。

 この本では、SDGsの成り立ちの緊迫した国際政治の駆け引きと、それを乗り越えて、まとめあげた人々のドラマが語られる。他に溢れるほどのSDGs関連の書籍があるが、この本の素晴らしさは、私が、もっとも大切であると思う「SDGsと私」との関係性の視点を、私たちの身近な社会課題に落としていることだと考えている。

 「地域創生SDGs」や「労働組合と共同組合SDGs」などの、日本でのSDGsに取り組む人々の取り組みを紹介している。これが、非常に面白いし、学びの好例となっている。 何が面白いかは、是非、本を手に取って読んでもらいたい。街おこしや地域創生を学んできた私にとっては、岡山県智頭町の「町ビジョン策定」の事例や千葉県松戸市の「協同労働」の考え方は、非常に参考になった。

 世界の問題と自分との関係を、常に、見つけられて実践できる。また、結び付けられる人になる。本に登場する「集落問題」に取り組む方が語る考え方が好きだ。

 「『集落』をベースに福祉を考えると、大事なのは、『縁』を支える、ということじゃないかと思うんです。個人が個人を支えるのは難しいですよね。でも、『縁』、ネットワークを支える、ということができていれば、例えば隣の人が独居の老人でも、毎月娘さんが来て世話をしているな、ということがわかる。自分としては、手をだすのではなく、目を配っていればよい。『見えない縁を見ようとする力』と、もし縁がなかったら、それを作ろう、結ぼう、という力が大事なんだと思います」

「自分のやっていることは、SDGsにもつながっている思いますよ。

 「だれ一人取り残さない」。これは、SDGsの謳い文句だ。「だれ一人」とは、貧困や差別に苦しむ人のことを指したことばであると思うが、私は、この言葉は、全世界の人々のためにある言葉であると考えている。

 「SDGsのゴールに向けて走る人を、だれ一人取り残さない」

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