「佐渡島庸平」

 本のタイトルは、「WE ARE LONLY,BUT NOT ALONE.」である。佐渡島庸平さんは、「はじめで」こう締めくくっている。

コミュニティについて考えることと、孤独について考えることは似ているように感じる。

『宇宙兄弟』の中にこんなセリフがある。*漫画『宇宙兄弟』は、佐渡島さんの編集である。

「We are lonely,but not alone」

このセリフが、宇宙で一人漂う宇宙飛行士が発するものだ。しかし、たくさんの人間に囲まれていても、lonelyにはなる。どうすれば、not aloneになれるのか、コミュニティについて考えながら、さぐりたいと思う。

本書「はじめに」より

  本の冒頭、facebookが2017年にこれまで掲げてきた企業ミッションを、創立以来はじめて変更したことが語られる。

 「コミュニティづくりを応援し、人と人とがより身近になる世界を実現する」。つなげる、から、コミュニティ支援へ。CEOのマーク・ザッカバーグは、こんな発言をしている。

 「私たちは約10憶人が有意義なグループに参加できるよう、支援したい。かつて人と人をつなげるサポートをすることで自然と世界はより良くなると考えていましたが、世界はいまだに分断したままです。ただ、つなげるのではなく、人と人がより身近になるような世界を実現することに注力する必要がある」と。

 続いて、

 「情報量が圧倒的に増えると、それぞれの人が違う情報に触れる。他人が触れている情報に触れず、自分だけの情報を取り続けて、多様な価値観がどんどん強化されていく。情報が爆発すると、どの情報を信頼すればいいかわからなくなる。その結果、マスコミ以前の社会と同じ感じで口コミを頼ることになる。どんな情報化よりも、誰が言っているのかの方が、重要になってくる」

 SNSがオープンであればオープンであるほど、安心・安全は確保されないと、言う。

 この世に、コミュニティは無数に存在する。では、安心・安全のコミュニティを作る上での最優先事項は何か?佐渡島さんは、SHOWROOMの創業者前田裕二さんの「人生の勝算」から、コミュニティの要素として次の5を引用している。

 余白の存在

 常連客の存在

 仮想敵を作ること

 秘伝やコンテクスト、共通言語を共有すること

 共通の目的やベクトルを持つこと

「人生の勝算」前田裕二著

 少し、キリスト教などの宗教組織にあるコミュティ論に通じるものがあるが、人間が集団化するときの理論としては成功している論だ。ここから、そのコミュニティの安心・安全とは何かを含めて、新しいコミュニティ論を創発していく必要があると感じている。この本は、そのひとつのありようを私たちに示してくれていると思う。

 「強い人間なんてどこにも居やしない。強い振りのできる人間が居るだけさ」村上春樹著『風の歌を聴け』

 「情報は一人ひとり、手渡しで」。この本書で語られている佐渡島さんの考えが、私のこころを、そのありように導いてくれている。