「ハイコンセプト」~新しいことを考え出す人の時代

 

 もしかしたら、今までの本の中で最も多く付箋をつけた本かもしれない。付箋が多いということは、新たな学びが多かったということでもあり、共感する部分の納得感が、付箋を貼る行動を促したのだと思う。

 誰かのSNSでの紹介だったと思う。今は、その情報に出会えたことに感謝すると共に、こうした波及効果は、個が情報を発信することの大切さを考える私にとっては貴重な実証となる。

「ハイコンセプト」ダニエル・ピンク

 著者は、『第三の波』で有名なアルビン・トフラーの説を踏まえ、農業時代の『第一の波』、産業時代の「第二の波」、そして、情報化社会の『第三の波』。その情報化社会もいまや最終段階に入って、早くも『第四の波』が教え寄せていると、時代の分析を述べる。

 それを前提に、本の副題を「情報化社会からコンセプチュアル社会」へと変わると予想する。いや、もう、その社会に変わっている兆しが、世界中で顕れているのだと、その実例を挙げて理論を深めていく。

 コンセプチュアルでは、それを具現化する能力として「コンセプチュアルスキル」が取り上げられる。「概念化能力」とも呼ばれもので、物事の本質を見極めることで、個人や組織の可能性を最大限まで高めることができる能力のことだ。コンセプチュアルスキルを身につけると、あいまいで抽象的な「正解のない」問題に直面した場合でも、物事を理論的・創造的に考えることできる。そして、周囲の人が納得できる答えを導き出したうえで、「問題を解決するためにこれから何をすればいいか」という計画を立てることも可能になるというのだ。

 今の経済や社会は、「情報化の時代」のロジカルで直線的で、まるでコンピューターのような能力で築かれたものだった。

 今、世界の情報社会の最先端とされる生成AIの誕生が、それを裏付けていると私は考えている。それで時代の変化を読み取れているだろうかとの違和感を持っている私に、著者は、これからは、創造や共感、そして総括的展望を持つことによって社会や経済がきずかれる時代、すなわち「コンセプトに時代」になると断言する。

 そして、その時代を生きる、築き上げる重要な資質として六つ挙げる。「六つのセンス(感性)」と呼び、仕事上の成功を収められるか、生活に満足を得られるかは、その「六のセンス」に多大きく左右されるようになると語る。

デザイン

物語

調和

共感

遊び

生きがい

 この「六のセンス」は、誰でもが身に付けることができる資質だと述べ、本書がその手助けになれば幸いであると、著者は、その願いを吐露する。

 そこで重要になるのが、「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」という力であり、これまでとは違った新しい思考やアプローチである。

 「ハイ・コンセプト」とは、パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面を訴える美を生み出す能力、人を納得させる話ができる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力などのことを言う。

 「ハイ・タッチ」とは、他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてその目的や意義を追求する能力などである。

 私は、大いに賛同する。

 個人、家族、組織を問わず、仕事上の成功においてもプライベートの充足においても、まったく「新しい全体思考」が必要とされ、創作力や共感、喜び、意義といった「右脳的」特質が必要とされる時代が来ているのだ。

 私が唱えている「智慧と慈悲の結集・編集・発信」、そして「ふたつで一つ、ふたつで三つ」の思考は、社会でも脳の左脳と右脳の世界でも実証される時代が、もう、来ているのである。

 生成AIについて、ある本で次のようことが語られおり、私は、その説に大いに納得したものである。

「文字や映像のデータの膨大な量をディープラーニングするだけの生成AIには、破れ目をもつ人間の能力に、絶対、敵うわけがない(要旨)」

 直線は、曲線があるから存在するのである。野崎

 私の知り合いは、「六つのセンス」を持つ人がたくさんいるのだ。なんて素晴らしいことなのかと深く思う。

https://biotopeone.jp

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1Hajime Nakasaki