テラ・ルネッサンス 鬼丸昌也さん

 初めて、鬼丸さんの講演を聞いて、「なんて話術に長けている人なんだろう」と唸ってしまった。とにかく、飽きない。2時間話を聞いても、何時までも頷いている自分に感動してしてしまうほど、人を巻き込むことの天才だと思う。私に、この能力があったら、自分の人生は変わっていたのにと思わせる程なのだ。とにかく素晴らしい。

 「知」を語らせるならば松岡正剛氏、そして、「情」を語らせるならば鬼丸昌也さんだと考えている。

 鬼丸さんは、大学生時代、スリランカのアジア最大級と言われるNGO団体サルボダヤ運動の創始者A・T・アリヤラトネ氏と出会い、その人生を世界の社会課題解決のために捧げる。「良き師と出会うことは一緒の宝である」とい格言があるが、彼の生きざまが、それを証明している。彼が創設した認定NPO法人「テラ・ルネッサンス」は、カンボジアの地雷撤去から始まった。私も、カンボジアで地雷撤去の作業現場を取材したが、その作業は、広大な土地を数センチ単位で進む作業である。「完全に地雷が撤去されるのに、あと、何年かかるのだろう?」。その平和に取り組む活動は、アフリカやウクライナの地などに広がり、世界の社会課題解決に取り組んでいる。それは「いのちを育むために」。 

 テラ・ルネッサンスの行動規範に、鬼丸さんの考えが顕されていると考えている。素晴らしい綱領となっている。

テラ・ルネッサンス・クレド(行動規範)
 imagination      ・すべては想像することから始まる
 keep Challenging ・自分の限界を決めつけない
 Result-Oriented  ・到達点を常に意識する
 Teamwork     ・互いの個性を活かし、チームとして最大限の力を発揮する
 Enjoy the Process・プロセスを楽しむ
 Balance          ・多角的な視点で、しなやかに行動する
  
このクレドを追求するために、この1週間、何を「しよう」と思いますか?
                          鬼丸昌也 note より

 私も、取材も含めて、アリアラトネ氏には何度も出会っている。一見、気さくなおじさんという感じだった。インタビューもさせていただいた。仏陀の瞑想方法も教えていただいた。確か、息を吐いたり吸ったりの「数息観」だったと思う。スリランカの山間部の村でボランティアをする日本人女性も、取材のために紹介していただいたりした。スリランカでは、その女性との思い出も深いが、取材した村の家族のことも忘れられない。朝早くから夜遅くまで、取材した。

 その家族との別れ際、長女の女の子が、写真を送ってほしいと、住所が書かれたメモを手渡してきた。「必ずねっ」と、はにかむように訴える眼が美しかった。

 日本に帰り、その取材した編集を終えた頃、私の手元に、その彼女から手紙が届いた。名刺を渡していた。電気もない村の生活、朝から晩まで家事労働をする彼女は、どんな想いで書いたかと思うと胸がきゅんとなった。「俺は、悪いおじさんだ」。はっきりとは読み取れなかったが、写真を楽しみにしていると書いてあったと思う。一段落してから「写真」を送った。しかし、その住所が書かれたメモの字が読み切れない。真似してなぞったように住所を書いたが、果たして、その女の子に届いたかはわからない。

 ふっと彼女のことを思い出す時がある。それは、後悔の念とともに湧き出してくる。何故、手紙をちゃんと読まなかったのか。何故、スリランカの知り合いがいるのに相談しなかったのか。国際郵便の送り方に間違いがなかったか。後悔しかない。

 「出会い」。もしかして、その「出会い」は、二度とない「出会い」かもしれない。もしかして、その「出会い」は、前世からの約束だったのかもしれない。もっと言えば、神仏の計らいだったのかもしれない。「出会い」は、不思議だ。

 鬼丸さんとアルヤラト師との出会いは、まさに、その不思議さを感じずにはいられない出来事だ。

「出会い」を大事にする。

それが、「社会課題を解決する人のスキルだ」と。いや、人間としての大事なこころだと、鬼丸さんに教えていただいた。

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