この手の本は大好きだ。タイトルの「はずれ者が進化をつくる」。得意の「その通り!」と発したい。同時に、これは、真理だとも声を挙げたい。
「飛べない鳥キュウイは、飛べなかったから子孫をたくさん産めました」
「ミミズは、元々あった足を捨てたから、土の中で生き残れた」
「雑草は、踏まれても立ち上がらないから踏まれる前より成長できる」
本の表紙を飾る言葉が気持ち良い。「進化に成功したのは、『強い』生き物ではなく、オンリー1になれる場所をみつけた誰よりも「弱い」生き物たちでした。そんな彼らが”人間らしく”生きるための知恵を私たちに教えてくれました。」との文字が表紙で踊っている。面白い。そして、表紙をめくると、帯の言葉が眼に飛び込んでくる。
「皆さんは、自分の弱さを見つけることがありますか?そうだとすれば、幸いです。何しろ自然界を見渡せば『弱い生き物たち』が繁栄しているからです。
「弱い」ことは、成功の条件であるかのようです。
目次を見るだけで、ワクワクしてしまう自分がいます。
「個性」とは何か?・「ふつう」とは何か?・「区別」とは何か?・「多様性」とは何か?・「らしさ」とは何か?・「勝つ」とは何か?・「強さ」とは何か?・「大切なもの」は何か?・「生きる」とは何か?授業の時間割風に章の言葉が紡がれている。
目次だけで、やられてしまった。普段、当たり前のように話している言葉に、「何か?」と問いを繋げるだけで、一気に思考の領域が広がってくる感じの配列だ。今度、使わせていただこう。『「ありがとう」とは何か?』。イケそうである。素直な問いは、人間関係の「間(あいだ)」を力強く引き付けさせるエネルギーのようだ。
強さにはいろいろある
強くなければいきていけない自然界で、弱い植物である雑草ははびこっています。これはなぜでしょう。強さというのは、何も競争に強いだけを指しません。英国の生態学者であるジョン・フィリップ・グライムという人は、植物が成功するためには三つの強さがあると言います。
一つは競争に強いということです。
植物は、光を浴びて光合成をしなければ生きていくことができません。植物の競争は、まずは光の奪い合いです。成長が早くて、大きくなる植物は、光を独占することができます。もし、その植物の陰になれば、十分に光を浴びることはできません。植物にとって、光の争奪に勝つことは、生きていく上でとても大切なことです。しかし、この競争に強い植物が、必ずしも勝ち抜くとは限りません。競争に強い植物が強さを発揮できない場所もたくさんあるのです。それは、水がなかったり、寒かったりという過酷な環境です。
この環境にじっと耐えるというのが二つ目の強さです。
たとえば、サボテンは水がない砂漠でも枯れることはありません。高い雪山に生える高山植物は、じっと氷雪に耐え忍ぶことができます。厳しい環境に負けないでじっと我慢することも、「強さ」なのです。
三つ目が変化を乗り越える力です。
じつは、雑草はこの三つ目の強さに優れていると言われます。雑草の生える場所を思い浮かべてみてください。草取りをされたり、草刈りをされたり、踏まれたり、土を耕されたり。雑草が生えている場所は、人間によってさまざまな環境の変化がもたらされます。そのピンチを次々と乗り越えていく、これが雑草の強さなのです。実際には、地球上の植物が、この三つのいずれかに分類されるということではなく、むしろ、すべての植物が、この三つの強さを持っていて、そのバランス自らの戦略を組み立てられている考えられています。植物にとって競争に勝つことだけが、強さの象徴ではありません。一口に「強さ」と言っても、本当にいろいろな強さがあるのです。
七時間目「強さ」とは何か? より
おわりでは、「個性」について語りかける。
ある一人が私に向かってこう言いました。「個性って作るものとか、伸ばすものじゃないんだよね。個性はでてきちゃうものだから」。お釈迦さまに「天上天下唯我独尊」という言葉があります。これは、「広い宇宙の中で、誰もがたった唯一の尊い存在である」ということを意味しています。宇宙が誕生してきて以来、同じ個性をもった人間はだれ一人としていません。
私の個性は、この世に誕生した、唯一の個性なのです。私は、個性を出すことが強さだと感じています。そのことに納得できる自分に、ようやく成れたと思っています。