「ドラッカーに学ぶ人間学」

 「マネージメントとは化学であり、同時に人間学である」とピーター・ドラッカーは語っている。

 付箋をつけた個所は、数しれず。ドラッカーの本を読む時は、いつも、こうなる。いっそ、本丸ごとコピペして紹介したほうが、ドラッカーの真意は伝わると思うのだ。管理職になってマネージメント関連の本は、同僚以上に読んでいたと思うし、中国古典をはじめとして東洋哲学関連の本も狩猟した。今、考えれば、ドラッカー理解するには、「科学」と「人間学」という2つが必要なのだと考えている。仏教でいう中道というバランスの中で、人間が活かしていく、利用していくべきなのがマネージメントなのだと思う。

 ドラッカーは、「組織は、人間を成長させる道具である」と語っている。そして、「組織を自らの役に立つものにするためには、自らは何を行うべきか」に続き、「われわれは、組織が一人ひとりの人間に対して位置と役割を与えることを当然のこととしなければならない。同時に、組織をもって自己実現と成長の機会とすることを当然のこととしなければならない」と結んでいる。

 「組織は、社会の道具であるとともに、個人にとっての存在意義を示す道具であるので、組織で働く人が、道具としての組織に使われていると考えるのはまちがいである」と、著者のドラッカー学会共同代表理事の佐藤等は語る。そして、「それゆえ経営者を含め、組織で働くすべての人は、組織という道具を使って世のため、人のために何をなすかという課題に真剣向き合うことが求められる」と、私達を導く。

 月刊『致知』の「特集総リード」をまとめた至言の宝庫、『人生の法則』に「運命をひらく」というテーマで掲げられた四つの条件は、組織という道具を使って、いかに人生を切りひらいていくかを示唆していると紹介されている。

第1条件 「心のコップ」を立てること。

第2条件 「決意」し、それを持続すること。

第3条件 「敬するもの」を持つこと。

第4条件 「縁」を大事にすること。

「人生の法則」特別篇 藤尾秀昭「致知出版社」

 詳細に説明することはできないが、簡単に述べると、「『どのような貢献ができるか』を自問しなければ、目標を低く設定するばかりではなく、間違った目標を設定する。何よりも、自ら行うべき貢献を狭く設定する」「人というものは、自らが自らに課す要求に応じて成長する。自らが成果や業績とみなすものに従って成長する。自からに少ししか求めなければ成長しない。多くを求めるならば何も達成しない者と同じ努力で巨人に成長する」

 そして、「人の成長のために働かないかぎり、自ら成長することはない」と結論づけ、4つの条件を締めくくっている。

 ただ単に、組織人としての学びだけではなく、汲んでも汲んでも枯れない井戸水のように、そして、語っても語って言い尽くせない聖典のように、人間としてのありようを示唆する宝珠が埋め込まれている本だと思う。当webサイト「ミネルバの梟」で紹介するにふさわしい内容だった。また、読んだ時、どんな宝珠を眼にすることができるかが愉しみだ。