セーラー服の歌人 鳥居

 まず、本の装丁のコピーに驚かされる。まず、「セーラー服の歌人」。そして、「拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語」。極めつけは、「今も複雑性PTSDの病と共に生きる女性歌人の感動的半生」である。そして、「いとうせいこう氏推薦」駄目押しがくる。もうこれだけで、本の中味が分ってしまうほどだ。

 私は、この情報をTV番組で知った。万葉集に始まって、現代の和歌にも興味がある私は、何気なくAmazonを開いて購入したが、数年間、本棚の飾りとなっていた。気分が重くなる本は、どうしても、後回しになってしまう自分だ。

 しかし、手にして読み始めて終わった頃には、気分が重くなるどころか、妙に気分がくすぐられるような味わいなのである。内容は、悲惨だ。でも、それを和歌に綴ったところに、救いがあるように感じていた。

 巻頭に、こう書かれている。「これは、生きづらさを抱えたあなた、失意に沈んだ時のあなた、悲しみにくれる日のあなたーのための物語でもあるのです」。決して、今の自分より悲惨な人生を送っている人がいるということで、自己を高みに置き、その、現状の苦から逃れるために描かれているわけではない。

 「親もなく、信じられる大人とも出会えなかった時、人はどう生きればいいのか?」

 その問いに向き合って生きてきた彼女は和歌を紡いだ。

 「便箋に似ている手首 あたたかく燃やせば 誰かのかがり火になる」

「家でしてあなたの部屋で起きる朝 マザー・テレサのページをめくる」